年齢を重ねると「世間は狭いなあ」と感じることもしばしばあります。偶然的な人との繋がりなのですが、よくよく話してみるとその出会いは必然だったりするのです。　たとえば、DHチャンピオンの末政美緒ちゃんのお父さんとはレース会場では面識があったものの、話をしたことは有りませんでした。そんな末政パパがある日、店を訪れてくださいました。「イッポンさんから（ボクが）店をやってると聞いて」とのことでした。「イッポンさん」とはボクのテレマークスキー仲間であり、山の大先輩です。以前ボクが企画したスキー/ボードツアーに参加してもらったのを機に、以来季節を問わずいろいろな山遊びを一緒に遊んでいるのです。そのイッポンさんと何で美緒ちゃんのお父さんが繋がるの!？末政さんご自身は多くは語られずに帰られましたが、後にイッポンさんに聞いた話では、日本のクライマーが海外にこぞって進出しだした頃に欧米の岩、壁に精力的に挑んだ"大物”とのこと。そして神戸を拠点に登山活動をしていたイッポンさんとも当然古くからの山仲間なのだそうです。

「遊びと仕事の両立」のギリギリラインって？
　ボクがどんなにがんばって遊んだところでかなわない本当の「遊び人（アソビジン）」、それが「イッポンさん」です。ニシムラコーヒーを好み、ビゴのパンをこよなく愛する生粋の神戸人であるイッポンさんは地元の山岳クラブのリーダーであり、夏季はクライミング、沢登り、冬季は山岳スキーにアイスクライミングと活動します。カヌーでは現役の国体選手でもあり、オートバイトライアルもやる。
　ロードとMTBを所有し、初めてもらったメールはある北アルプスの有名なルートを「ただいま走行中！」という印象的なものでした。今まで「遊びに行きましょか？」といって断られたことはありません。一体どこにそんなパワーがあるのかと思うほどですが、日常は神戸の繁華街に立派な店を構えるちゃんとした「大人」です。
　そんなイッポンさんと昨シーズン、ボク達はある試みを実践してみることにしました。神戸に住みながらパウダースノーしか滑りたくないという条件はなかなか容易なことではなく、天気図と天気予報、現地の情報で「降る！」と判断すると前夜に用具を準備して早朝に出発します。ケチケチルートで約3時間で現地に着き、条件がよければゲレンデ内で、物足りなければ登山届を出して稜線まで登って滑ります。いずれの場合も10時には帰路に付き、昼過ぎには神戸に戻ってきて何食わぬ顔で仕事をするわけです。
　一見ばかばかしいのようですが、パウダースノーのためだけなら1日中スキー場にいる必要も無く、リフト券も安上がりで、何より大事な仕事に大きな影響を与えることなしに、数少ないチャンスも逃さないという画期的なアイデアです。まさに「遊びと仕事の両立」のぎりぎりラインというところでしょうか。
　しかし、さらにイッポンさんはこんなものではありません。彼の重要な冬の活動はアイスクライミングです。凍結した滝（氷瀑）を2本のピッケルとアイゼンを使って攀じ登るというものですが、そんなことができるフィールドはそう多くはありません。しかし条件がそろえば神戸背山の山中でも滝が凍りつくこともあるらしく、パウダースノーと同様、天気図と寒波に注意していればその一瞬のチャンスを逃すことなく、そして出勤前の時間を活かして楽しむことができるというのです、しかも独りで。
　イッポンさんは極端な例としても、その行動力からはいくつかのヒントを得ることが出来ます。バイクライドの場合は家を一歩出ればそこがフィールドなのでですから、30分か1時間でも楽しめるはずです。
　店を開業するにあたって「ライフスタイルを提案したい」なんてことをえらそーに言っていたのですが、実はいろいろな人が集まってくることによって影響され、より楽しく生活していくものなんだなーとつくづく感じさせられているところです。そして出会うべくして出会った仲間や友達の存在が「オキドキなライフスタイル」には必要不可欠。いかに自分が満足した生活を送っていたとしてもその周りに誰もいない、独りぽっちなんて考えられません。「ライフスタイル」という言葉からイメージすると個人々々のレベルだけをつい考えてしまいがちですが、改めてオキドキなライフスタイルのためには楽しい仲間、これ重要！です。